炭酸ガスレーザーを使って従来の10倍もの長距離で放射性物質を検出することに科学者が成功

放射線量を測定するガイガーカウンターなどの機器は、放射性物質から放出される粒子を検出していますが、その仕組みにより放射性物質の近くでしか動作しないという制約があります。新たにメリーランド大学やロスアラモス国立研究所などの研究チームが、二酸化炭素を媒質にする炭酸ガス(CO2)レーザーを用いることで、10m離れた位置から放射性物質を検出することに成功しました。
Remote detection of radioactive material using a short-pulse laser | Phys. Rev. Applied
https://journals.aps.org/prapplied/abstract/10.1103/PhysRevApplied.23.034004

Laser-based radiation detector allows testing from a safer distance
https://phys.org/news/2025-03-laser-based-detector-safer-distance.html
CO2 laser enables long-range detection of radioactive material – Physics World
https://physicsworld.com/a/co2-laser-enables-long-range-detection-of-radioactive-material/
原子力発電所や核兵器などの製造では、作業員の安全を確保するために放射線レベルを常に監視することが求められます。しかし、ほとんどの放射線測定機器は発生源のすぐ近くでしか動作しないため、放射線が検出された時点ですでに作業員が放射線源に近づいており、有害な量の放射線を浴びてしまう可能性があるとのこと。
そこで、メリーランド大学の電子応用物理研究所に所属するハワード・ミルヒバーグ教授らの研究チームは、二酸化炭素を媒質に高出力のパルス波を得るCO2レーザーを用いて、長距離から放射線を検出する方法を開発しました。
研究チームが検出に利用したのは、放射性物質が周囲の空気をイオン化する電離作用という現象です。放射性物質は物質を通過する際に粒子を放出し、この粒子が物資中の原子から電子をはじき出すことで、自由電子と陽イオンが生成されます。これらのイオンは通常、空気中に低濃度でしか存在しないため、検出するのは困難です。
新たに研究チームは、CO2レーザーをこれらのイオンに照射するとイオンが加速して中性ガス分子と衝突し、さらなるイオン化が引き起こされることを実証しました。これによってイオンや自由電子が連鎖的に生成され、小さなプラズマが発生するとのこと。

研究チームは、放射性物質により生成されたイオンにCO2レーザーを照射し、さらなるイオン化が生じる現象を「electron avalanche breakdown(電子なだれ崩壊)」と呼んでいます。
CO2レーザーにより発生した電子なだれ崩壊は、レーザー光を散乱させるマイクロプラズマを生成します。その後方散乱光のプロファイルを測定することにより、放射性物質の存在を検出できると研究チームは説明しています。
実際に研究チームは、放射性同位体の一種であるポロニウム210を使用して、CO2レーザーによる放射線検出テストを行いました。その結果、中赤外線レーザーを用いた従来の方法で可能だった「1m」の10倍に当たる「10m」の距離から、放射線を検出することに成功しました。
CO2レーザーはそれ自体で物質をイオン化することはない程度に低エネルギーでありつつ、電子なだれ崩壊を促進できる程度の強度があるそうで、ミルヒバーグ氏は「これはスイートスポットのようなものです」と述べています。

研究チームは今回の方法をさらに拡張し、100mを超える長距離で放射性物質の検出が可能になると考えていますが、その実現にはレーザーの形状や機器のサイズといった障壁があります。また、エアロゾルや空気の乱流といったノイズに対して強固かどうかも確認する必要があるとのことです。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
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